経済の拡大ってどういうこと??【暫定解答編】

後輩たちに勧めてもらった、岩井克人貨幣論』と『会社はこれからどうなるのか』を読みました。

この2冊と、後輩たちが教えてくれた知識から、自分なりに暫定の解答を考えてみました。


新書ブーム的な読みやすい本しか読んでこなかったので、特に『貨幣論』は最初読みにくかったのですが、慣れてきてからは一気に引き込まれました。

おれにとって読みにくい文章(『貨幣論』でたびたび引用されているマルクスの文章は最後まで読みにくかった)とは、使われている語彙が専門的だったり難解であることではなく、
1、指示代名詞が多く、何を指しているのかが瞬時に掴めない
2、議論が抽象的で具体例がなくイメージできない
文章である、という大きな教訓も得られました。


岩井克人さんの文章はどちらにも該当しなかったので、慣れてくるとすんなり読めました。

おれの疑問はなんだったのか?

経済の拡大ってどういうこと?? - あいうえおかの日記

分散投資とかいうけれど、投資ってつまるところ「世界経済が全体としては拡大していく」っていうことが当然の前提にある気がします。

だけど経済学を学んだことがないおれには、経済が拡大していくってことの意味が分からないのでどなたか教えてほしいのです。


「短期的な変動はあるが、長期的には世界の時価総額の合計は大きくなっていく」というのが本当か?というのがおれの最初の疑問だったのだと思います。



この疑問には2つの要素があって、それは
1、「市場原理によって価格は限界費用に等しくなる」ということと「第三の波」の終焉との混同
2、貨幣や物価という概念に対する無知
ということだと思います。

価格は限界費用+αに近づいていく

ITの発展によって、間に入る”人”が不要になっていく
工場の中でも、”人”はロボットやシステムに置き換えられていく

イラレで下手なロボットの絵まで描いてみましたが、これはつまり「市場原理によって価格は限界費用に等しくなっていく」というだけのことで、第一次産業から第二次産業第三次産業への流れであるとか、ポスト産業資本主義とか、第三の波と呼ばれること、そのものでした。つまり改めて考えるまでもない当たり前のことでした。。

貨幣は、貨幣として流通しているから貨幣なのである

貨幣論』には「貨幣は、貨幣として流通しているから貨幣なのである」ということが書かれています。

ここが異様に長くなったので、分けて別記事にしました。もし良かったら見てみてください。

再び「経済は拡大を続ける」のか?

ここまでのおれの認識をもう一度整理すると、
1、市場原理によって(名目価格ではなく物価変動を差し引いた)実質価格は限界費用に近づいていく
2、貨幣価値の変動と、経済の拡大・縮小はつながってはいるが根本的には別の論点である
ということになります。残念ながら正しいのかどうかさっぱり分からないけれど、だいぶ賢くなった気がする(笑)


ここでもう一度「経済は拡大を続けるのか?」という疑問がわく。第三の波が終焉したのちに、なんらかの第四の波はやってくるのだろうか?

いつか世界の人口が平衡状態に到達し、既存のすべての商品が限界費用で売られるようになったとして、それでも経済は拡大し続けるのだろうか?それとも新しい産業が生まれ続け、一時的な独占からの収益→その産業のコモディティ化というサイクルが繰り返され続けるのだろうか?(参照:新聞の没落と資本主義の運命



これに対する考え方としては、

1、雇用創出の重点分野として、介護・環境・農業などが挙げられている時点で、近い将来に新しい産業なんて生まれなくなるんじゃない?
(この場合、産業ロボットの導入などですべての商品が原価に近づいていくことで、実質GDPは徐々に下がっていくと考えられる)

2、いやいや人間の欲望には限りがないから、これからも新しい産業は生まれ続けるっしょ!
(この場合、多様性を提供し対価を得る仕組みをどう作るかが鍵になると、個人的には思います


という2つが考えられ、さらには、

3、そもそも世界の人口が平衡状態に達することなんてなくて、火星に進出したりして人間の数自体が拡大し続けていき、経済も拡大し続けていくでしょ
という考え方もありえると思う。



非常に長くなりました。。もし最後まで読んでくださった方がいらっしゃったら、本当にありがとうございます!そして、間違っているところなど指摘していただけるとものすごくうれしいです。


最後におれが好きなブログの一つから
金融日記:世界は本当に働かなくても食っていけるほど生産性が向上したのだろうか? その2

現代の世界は生産性が向上しすぎていて、みんな遊んで暮らすことも実は可能なのです。
だから、ベーシック・インカムのような制度は導入すればきっとうまく行くはずです。
嫌な競争も疲れる労働もない、みんな遊んで暮らせる幸せなユートピアはすぐそこにあるのではないでしょうか?


しかし、そんな夢物語は本当なのでしょうか?


そもそも、なぜ世界の生産性がこんなに向上したのかと言うと、それは資本主義の競争原理が非常にうまく行き、人々が必死に努力して技術革新を繰り返してきたからに他ありません。
逆に競争原理が働かない社会主義は例外なく崩壊してしまいました。


資本主義社会は毎日が競争で、その競争に敗れると惨めな生活が待っています。
失業してどこにも行けない派遣村の住人のように。
逆にこの資本主義社会で競争に勝つと大金が転がり込んできます。
そして、資本主義社会では人間の大抵の欲望は金で満たせるようになっています。
この残酷なまでの信賞必罰が、この世界の生産性をここまで高めたのではないのでしょうか?


そうやって考えると、働かなくても生活が出来てしまうベーシック・インカムのような社会主義的な制度は、なんかとても危険な考えのような気がします。
多分、最初の1、2年はうまく行くかもしれないけど、10年、20年の長期では社会を腐らせてしまい、結局、前提条件だった高い世界の生産性そのものを崩壊させてしまうのでしょう。

貨幣論 (ちくま学芸文庫)  会社はこれからどうなるのか