たとえ全てのことに理由があるとしても、その理由が妥当であるとは限らない

人は空を飛べるように進化しませんでした。

でもそれは、人が空を飛べないことが正しいということも、良いということも意味しません。

人が空を飛べない理由は、人が進化の過程で、空を飛べるようになるような遺伝子の変異が起こらなかったこと、それ以上でもそれ以下でもありません。


「ルールには従うべきだ。なぜなら、あとから振り返れば自分の次元の低さが理不尽さを感じさせていたことに気がつくことが多いからだ。すべてのことに理由がある。理不尽さを含めて受け入れる素直さを持て!」って言われた。


そのルールが目的に対して妥当であるか?、目的は本当にそれでいいのか?、おれはそんな風に考えていたい。そもそもすべての人にとって良いことなんてなくて、すべてのことはトレードオフ関係にあるとおれは思っている。

自分の次元が上がることと、慣習に懐柔されて自分に諦めることの違いに意識的でなかったら、生きていて楽しくない。


日経新聞 2009.6.2朝刊 やさしい経済学 金融危機と行動ファイナンス 4「失敗」するのが怖い(名古屋大学教授 加藤英明)

人が現状維持を好むという性向は、自分の失敗を認めたくないという心理(後悔回避)と深く関係している。これは人々に重要な決断を先延ばしさせたり、他人に追従されたりする傾向を増徴する。同じ損をしても、事故に巻き込まれるとか、災害にあうといった自分がコントロールできない損失の場合には、損失から受ける悲しみはあっても、どうしようもなかったという諦めが心の救いとなる。

(中略)

後悔をしないような選択をと誰もが願う。結果として、自分での意思決定をやめ、皆と同じ行動をとろうとする。別の言葉でいえば、先例にならうことになる。それが時として理屈に合わない無謀な行為だったとしてもである。


人はそういう風に進化してきたらしい。きっと進化の過程でそんな生き方が合理的だった状況があったんだろう。せめて未来が、そんな生き方が合理的ではない状況にしていきたい。

おれには何の力もなくて、ルールには従うしかないとしても、違和感だけは大切に持っていたい。それを捨てたら、おれはただ先例にならうだけの人になってしまう。そしていつかおれが力を持つ日が来たとして、同じことを繰り返すだけだから。


40億年の生命の進化の果てにヒトが誕生したのがなぜであろうとも、自然の摂理に逆らおうとすることは悪ではない。


進化心理学ってのは科学としてはまだ生まれたてで、世の中では仮説をもとに面白おかしく通俗的な話を作り上げられることも多いけれど(たまたま手に入れた日経サイエンス2009年4月号には"ポップ進化心理学"として揶揄する記事が載っている)、おれは好きです。

最近は行動経済学も流行っているみたいだし、もし興味を持たれた方がいらっしゃれば、『進化と人間行動』という本をお勧めします。

進化学は社会ダーウィニズム優生学の根拠とされた時代があって、それがいっそう進化学への反発を強めたと言われているけれど、もうそんなものじゃないんだよ、ということもしっかり示されているます。

2000年の本だからだいぶ古くなってしまっているけれど、科学的で偏見のない姿勢で書かれていると思うし、何より読み物としておもしろく読みやすいと思います。ちなみに東大の先生が書いていて、この先生の一般教養の授業は大人気だそうです。授業が大人気の先生が書いた本はだいたい読みやすい。



そんなことより、曽我部恵一BANDの新譜が届いた!夏が近づいてきている!!


進化と人間行動