6人のチームの生産性が、1×6<6どころか、1×6<1になっていないか?

最近は企業の新人研修を受けています。入社式から数えて、59日間の研修のうち13日、つまり2割強が終了しました。そして、今週は合宿研修という前半戦の山場でした。


新人研修のプログラムというのは実によく練られています。

頭では理解しているのに、誰もが陥いってしまう罠に見事に1回はめて「ほらはまるでしょ?」って示してみたり。与えられた手順をこなしていくと、自分の現状を認識して向かっていくべき成長の方向性が明らかになったり。

って感心していた。


そうしたら、クラスの担当マネージャーに言われたのです。


「みなさんは今日満足できるアウトプットを出した、と言いました。

今日、あなたたちは手順を与えられましたね。このアウトプットを出すために、用意しておくべきインプットも示されましたね。

ということは自分自身でこの手順を再現することができるはずです。

いい成果物を作るだけでなく、手順すらをも習得する、という気持ちで研修を受けていますか?」


各企業が、たとえばソニーパナソニックカゴメのようなメーカーや、マッキンゼ・ボスコン・野村総合研究所といった戦略ファームがどのような新人研修をやっているのか聞いてみたくてしょうがないですが、研修内容は社外秘なので聞けません。おれも研修の具体的な内容は話せません。


そんな感じですが、「チームで働く」ということについて、合宿研修で学んだことをメモしておこうと思います。


6人のグループの生産性が、1×6<<6だった

率直に言って、「こんな調子なら、自分一人で全部やれば、みんなでやるよりも短い時間で、かつ、レベルの高い成果物を作れる」って感じていました。だけどあるとき、自分からは絶対に出てこなかったアイデアにはっとさせられて、それがみんなのブレークスルーになったのです。

チームの目的は全体最適である。

全体最適 vs. オレ様最適 - Chikirinの日記

このように会社が家庭や学校と違う理由は、会社は「組織のアウトプットの最大化」が使命であり存在意義だってことでしょう。個別最適と全体最適が対立することなんてのはよくあって、なので「全体のアウトプットの最大化」が存在意義の組織では、「そういう場合には躊躇無く全体最適で考えるべき」という思考を刷り込むわけですよね。

ということが、研究者と企業で働く人の最大の違いだと思います。チームは、成果という目的を果たすための手段の一つである、ということを忘れてはいけないと思いました。

「積極的=手数が多い」ではない!

グループワークをすると、よく「もっと積極的に意見を言うべき」というような話が出るけれど、積極性の意味を取り違えてはいけないと痛感しました。議論に貢献しない発言は時間のムダです。

まず当事者意識を持って議論に臨み続ける。同時に、思いついたことを思いついたときに発言するのではなく、一呼吸置いて「この意見は議論に貢献するか?」と考えてから発言することが大切だと感じました。

まず目的、前提を共有すること

人もコンピュータも、情報をinput→process→outputという順番で処理しています。目的や前提情報が共有されていないと、outputが噛み合わず、絶対に建設的な議論はできない、と痛感しました。

ブレインストリーミングとフレームを意識的に使う

ブレインストーミングというのは意見を拡散させるステップ。だから、そのアイデアの是非を議論する時間ではないし、ましてや発言を途中でさえぎることは絶対にしてはいけない。ブレインストーミングには付箋が便利!

そしてブレインストーミング拡散させた意見を、フレームを当てて集約させる。今までビジネス書などで知っていただけだった「5W1H」、「ジョハリの窓」、各種マトリックスといったフレームを実際に使ってみてそのパワフルさを体感したり、ほんのささやかなものだけど自分たちでフレームを作り出した瞬間のわくわく感を味わいました。

自分の固定観念の枠の中で他の人の意見を捉えない

「○○ということでよろしいですか?」と相手の意見を要約して復唱することで確認する。

具体例を聞く。

簡単な言葉ほど、それをどういう定義で使っているかを確認する。

タイマーを使って強制的に時間管理をする

時間管理はいつでも難しいけれど、タイマーが手元にあるときとないときでは明らかに管理できる度合いが違いました。

フィードバックしあう

グループワークに真剣に取り組んだあとほど、フィードバックに適したタイミングはないと思いました。これを利用しない手はない!

受けたフィードバックと、自分自身の気づきを元に自分の考えをまとめる。それを発表して、さらにフィードバックを受ける。それを元にもう1回考えをまとめて、具体的な行動に落とし込む。それをもう1回みんなの前で発表してフィードバックを受ける。という贅沢な一日でした。




おれは居酒屋で4年間アルバイトをしていて、そこでチームで働く仕事したいと思ったのが、今の業界を選んだ理由の半分です。

今は具体的な経験があまりに乏しくて、こんなことを書いても誰にも伝わらないと思うけれど、この合宿のことは忘れてはいけないと思った。

個人ベースの研究室での仕事と、理想的なチームだと思っていたアルバイトとの2つの体験と比較する、という視点を忘れずに、たまにはドラッカーでも読みながら、このことを考え続けていこうと思います。


おれはいつか、人の気持ちを動かすことで、チームを動かす人になりたい。