京都が好きです

今日は真っ青な晴天で、暖かくて、完璧な一日でした。

茂庵でお昼ごはんを食べて、ずっと行ってみたかった詩仙堂にはじめて行って、それから大文字山に登ったのです。



大文字山から見る夕方の京都市街は、将軍塚から見る夜景よりもずっと迫ってくるものがあって、今日という一日が訪れた奇跡を思い、そして、6年間を泣いたり笑ったりしながらこの街で過ごしたんだ、って思ったのです。


京都に住んで丸6年。

あさって、引越し屋がやってきて、荷物を東京に持っていく。

これからおれが京都に来るときは、傍から見るとただの観光客で、だけどおれの心の中は決して、ただの観光客ではないのです。



春はおだやかで、夏はあほみたいに暑くて、秋は一気に寒くなって紅葉がきれいで、冬は心底寒い、そんな四季が鮮やかな京都が好きです。

バイトも買い物も観光も飲みにもライブも自転車で行ける、コンパクトな京都が好きです。

4年間バイトした店がある京都が好きです。

鴨川と南禅寺と将軍塚と下鴨神社がある京都が好きです。

西部講堂とメトロと磔磔afterbeatがある京都が好きです。

ロボピッチャーがいる京都が好きです。

おむら屋と吉田山の麓の屋台とリンゴとヤンパオとラパンと、それから茂庵がある京都が好きです。

京都大学がある京都が好きです。

京都での6年間は、他の街での学生生活なんてまったく想像できないくらい最高でした。



6年間の4つの居場所について書いてみることにします。


1つ目はサークルについて。

1回生の初め、ずっとサッカーをやってみたくて入ったサッカーサークルだけでは退屈で、アコースティック音楽のサークルに入りました。ギターなんて弾いたこともなくて、実際のところかわいい女の子がいたからとかそんな理由で、サークルに通うようになりました。

1回生の終わりに、サークル運営の幹部決めがありました。3人の幹部を投票で決めようとしたら、3番〜5番の人が辞退して、投票で6番目だったおれが幹部をすることになりました。

2回生の夏休みから学祭までの時間は濃厚でした。そうやってやってきた2年の学祭。2日目の夜、友達のステージで岸部眞明の『花』を聴きながら人目も憚らず泣いてしまったりもして。それに、あのときおれは恋をしていました。

それから3回生のときに、入学してからずっと憧れだった2つ上の先輩たちにお願いして立ち上げた卒業ライブ。あの日の卒業ライブは、数十回見たであろうサークルのライブの中で一番印象に残っています。

あの頃から考えると、みんなにずいぶんと変化がやってきたけれど、今でもやっぱりビールを飲んでたばこを吸いながらあの頃の話をすることがあります。


2つ目はサークルフェスティバルについて。

なぜかいきなり知らない人から電話がかかってきて、文字通り「縁あって」、サークル連盟の立ち上げに関わることができました。

僕たちのボスはものすごい情熱とクールさを兼ねあわせた人で、大学との交渉を完璧に取りまとめ、そしてぼくたちはサークルフェスティバルという実に平凡な名前のイベントを作りました。ステージを置いて、寄付を資金にただでビールを振舞ったのです。

あのイベントをおれは誇りに思います。いつまで続いていくのかは分からないし、もう誰もおれたちのことなんて知らないだろうけど、だけどあのイベントは間違いなくおれが、大好きな後輩たちと、それから我らがボスと、お世話になった大学のおっちゃんと一緒に作ったのです。


3つめは研究室について。

おれが3回生のときに、うちの先生はうちの大学にやってきました。とにかく話に惹きつけられて、この人の下にいたい!というその一心で研究室を選びました。おれらは先生のうちの大学での卒業研究1期生なのです。

先生と学生で車で学会に行ったり、ビールサーバーを出しては飲み会をしたり。狭い研究室で、こんな大人になりたいと思う人に3人も出会い、そのうち一人はフランス人で、それから思いもかけない出会いもありました。

修士論文前の追い込み。先生とアブストラクトやイントロをやりとりし、隣の席の助教の先生に相談する中で、先生の語る夢、おれの抱いた夢、そしておれの出したほんのわずかなデータが、すーっと一つの物語になっていきました。サイエンスはすてきです。


4つ目はバイトについて。

サークルの運営が一段落して、女の子にふられて、心の中が空っぽになった気がして、そんなとき友達のバイト先の居酒屋が人が足りないということでバイトを始めました。バイトを始めた頃は、お茶を出すのにも手が震えて、お客さんにまで心配され、笑われました。

入って半年経ったころからずっといつ辞めようかと考えていて、何回も後輩たちに相談に乗ってもらって、そして気がついたら4年が経っていました。

恒例になったハロウィーンのかぼちゃ彫り、20人くらいを送り出した数々の送別会、それから去年おれの誕生日にやった忘年会。バイト先のみんなは最強のチームだとおれは思っていて、その一員であれて幸せでした。



そう、おれは幸せ者なのです。

まるで必然だったようにすら思うけど、すべては偶然の積み重ねで奇跡以外の何物でもないのです。


In the right place at the right time.

どんなことだって、真摯に向き合えば、そこには素敵な人たちがいて、そこは”a right place”になるのだ、とそう思います。だから、新しい環境や人間関係を恐れずに、移り変わっていく日々と自分の気持ちに、素直に、それでいて力強く向き合って、精一杯生きていこう。

風に吹かれながら京都市街を見ていて、この街が力強く背中を押してくれているように感じました。