あれから2年以上が経った。

2年前のバイト先の忘年会。

その年一杯で店長の他の店舗への異動が決まって、それも直前に発表されて、異様な雰囲気がただよっていた。忘年会当日に知って、泣き出した人もいた。


その店長は1年半前の夏に異動してきて、店のやり方をがらっと変えた。その人自身前の店舗でいろいろあって期するところがあり、それからうちの店はそれまで開店からずっと赤字続きだったらしい。

隠れ家的なイメージ、個室で雰囲気重視、主な客層はキャバクラの同伴で9時にはお客さんが引いてすっからかん、そんな店を、活気ある店にしようとし、回転率を上げようとし、さらに改装して団体客が入れるようにした。

当然のようにそれまでのやり方に慣れ切ったバイトと激しくぶつかった。泣いたり泣かされたり、そんなことが毎日のように繰り広げられた。



そうやって気持ちや考えをぶつけられる人なんだと、何を言っても最後までちゃんと聞いてくれる人なんだと、自分の気持ちや考えを精一杯伝えてくれる人なんだと、バイトの気持ちを一生懸命考えてくれている人なんだと、気づくのに半年かかった。生意気で言いたい放題の急先鋒だったおれを信頼してくれていると気づくのに半年かかった。

お互いあまりにも不器用で、でもそれによって生み出された情熱が確かにあった、と思う。


年が明ける頃、店はおれが経験した中で最高のグルーヴ感に包まれていて、先輩と社員さんが一人抜けた3月まで、あの3ヶ月間はバイトの日が楽しみでしょうがなかったのです。


あの忘年会で、ぼくたちはサプライズでアルバムとポールスミスのキーケースと、それから手作りのTシャツをプレゼントした。あの人が泣きながら「みんなで力を合わせればできないことはないってことを教わりました」って言ったとき、バイトもみんな泣いていた。入ったばっかりのバイトだけが完全にきょとんとしてた。

あの頃を知っているバイトは、全員うちの店が好きだと思う。あの日あの場所にいたバイトは、全員あの日のことを思い出すと胸が熱くなると思う。



もう一つ。

おれは多分ものすごく性格が悪くて、小さなコミュニティーの中でもさらに小さい仲良しグループをいつも作ろうとしていたと思う。外の人や新しくやってきた人を排除しようとして、そうやってずっと高校の部活でもサークルでもバイト先でもやってきたんだと思う。


だけどそうじゃないんだって。いいとか悪いとかじゃなくて、ほんとうに楽しいのはそういうんじゃないんだって教えてくれたのは、バイトのみんなでした。

うちの店は長く続けてくれるバイトが多くて、みんな仲がよくて、そうなると新しいバイトはどうしても疎外感を感じがちだと思う。おれなんかがその典型で、おれはかわいい女の子にはめっぽう甘いというのに、そんな女の子たちですらみんなおれに話し掛けられなくて、怖くてしょうがなかったと言う。

だけどうちのバイトのみんなはすごい。新しく入ってきたバイトをあっという間に、輪の中に引き入れている。むしろおれが疎外感だ。


ひたすらいじっている後輩、半分本気でちやほやしている後輩、そんな風にそれぞれに対する接し方は違うけど、同じだけ好きってことがこんなに楽しいのだと知った。

それを誰よりも教えてくれた一番仲の良い後輩に、誰よりも感謝しています。



4年間お世話になったバイト先で、明日送別会をしてもらうのです。