劇的な瞬間
大学に入って5年半。そりゃ5年半もあればいろいろなものに出会って、新しい世界を知って、わくわくして。
だけど、そういったものにもひとつずつ冷めていって。
あれだけサッカーサッカー言ってたのに、テレビを見なくなって今年のユーロは1試合も見なかったけど、何ともなかった。
ギターを弾かなくなってもなんともなかった。
あれだけ自分にとって新しいバンドを発掘することに夢中になったのに、自分が今知っている音楽だけで満足するようになった。
生物学は大好きだけど、自分が実験することには夢を抱けなくなった。
そう考えると、自分にとって特別なものとか、本当に好きなものなんて何もない気がして怖くなる。自分はなんておもしろみのない人間なんだって、虚しくなる。
そんな中で最近はっきり認識したことは、おれは人間関係依存症なのです。
それだけはずっと変わらなくて、今でも残っている。
それはおれだって、できることなら自分以外の人が傍にいてくれることを前提にしないで、一人でも楽しくやっていける人になりたいと思っている。実際にそういう人は周りにいて、尊敬しているし、憧れる。
だけど依存症なんだからしょうがない。うまくそれと付き合っていこう、と思うようになった。
4年で卒業していたら、仲良くなることとか、そもそも知り合うこともなかった人。そういう人たちとの関係がおれが2年間余計に親のすねをかじった意味なんだと、すごく思う。
だから、そういう人間関係を思いっきり楽しみたいと思うし、そういう人が学祭に出なよって言ってくれて、そういう人と学祭で一緒に演奏できることは、それはそれでおれなりの学生生活の総決算の一つなんだと思うのです。
そういう思いを込めて、劇的な瞬間という歌を歌います。
もともと全然うまくないギターも歌も、自分でもびっくりするくらい下手になっているけれど、あと2週間一生懸命練習するから、今回だけは言うんだ。みんなに見に来てほしいのです。
今おれにとって大切な人たちは、全員が全員2年前よりおれにとってずっと大切な人になっているのです。だから忙しいのにたった5分のためにわざわざ学祭なんか行かない、なんて言わずに、見に来てほしいのです。