なぜキリスト教が近代を作ったのか

橋爪×大澤『ふしぎなキリスト教』を読んだ。おもしろかった!

まずユダヤ教を扱って「試練」という考え方(原因がないのに悪い出来事が起こることを神と対話しながら引き受けて生きること)や偶像崇拝の禁止といった一神教の論理を解説し、キリスト教の特異性は単なる預言者ではない「イエス・キリスト」の存在であること、それは他の一神教にはない論理的な曖昧さを内包していることを示していく。

その上で、論理的な一貫性が高く実際に中世までは先行していたイスラム教ではなく、キリスト教が近代を作った理由が考察されている。

律法がないために自由に法律が作れたこと、特にプロテスタントの予定救済説が神の主権を徹底することで資本主義や自然科学の精神の動因になったことが示される。


ユダヤ教の律法が果たした役割は日常生活の一切合切をルール化することで千年経っても国家が崩壊しても自分たちの社会を保つことができたこと、結婚を押さえたことが教会が浸透していく過程で強い政治的パワーになった、プロテスタントが理性を絶対化し神が創った自然を知ることこそが神の意図を知ることになると考えたことで自然科学が発展した、マルクス主義の使命感や一貫性への執着はまさに典型的な一神教の論理だとか、なるほどと思うことが多い本でした。


ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)