サークルフェスが今年で最後なのは、きっとおれだけで、それがすごくうれしかったです。


突然ですが、ぼくはどうも飲み屋のカウンター席というのが苦手です。前に立っている料理人さんとの距離感が分からないのです。

特に知っている人が働いている店に行くと、勢いカウンターに座ることになるのですが、やっぱりどうも苦手なのです。


なんですけど、ただ一箇所だけカウンター席が大好きだったお店があります。それはバイト先の系列で、おれのバイト先から徒歩2分のお店なのです。

バイトを始めたころから、バイトが早く終わった日には決まって飲みに行っていて、でもビール何杯飲んでも2000円とかしか取ってくれないのが申し訳なくて、そうじゃなかったらもっともっと通っていたに違いありません。

そこでぼくはいっつも店長さんの前に座り、それはなんだかすごく落ち着くのです。

店長さんはみんなの憧れの人で、そんな店長さんが今日でついに寿退社されるのです。

そのお店はぼくがバイトを始めたときから三年半、社員さんが一人も変わっていなくて、卒業してバイトを辞めるときには、「就職したらお金いっぱい持ってきます」、って一番言いたい人だったのです。

一緒に働いたのなんておれがそのお店にヘルプで入った1回か2回だけなのに本当にお世話になって、もうカウンターに座っても前にその店長さんがいないなんて実感がわかないけれど、だけど心からおめでとうございます。



それから昨日は4年目だというサークルフェスでした。

台風が来るとかで、初の屋内開催になって、ものすごく楽しみにしていた秋刀魚屋は出店するのをやめました。

だけど初の屋内開催のサークルフェスは、やっぱりあったかくて、お客さんもびっくりするくらい入っていて。後輩がやっぱり朝からビールを飲んで酔いつぶれていて。それから我らがボスにも1年ぶりに再会して。

もう屋内でもできたんだから、うちのサークルが大きくなって機材を買い揃えたからほとんどお金もかからなくなったみたいだから、もういつまでもできるじゃないですか。

おれが顔も名前も知らない人が作り上げて楽しんでいて、そして昔の仲間たちが集まってくる場所。おれは「仲間」なんて言葉をよう使わないけど、あの場所はそんな言葉を使ってみたくなる場所で、おれは4年間本当にいい思いをさせてもらいました。


2年前のサークルフェスの日に、おれは

ほんの冗談のように言ったことからこんなに楽しい夜がやってくるなら、何でも言ってみるもんだなと思いました。何でもやってみるものだなと思いました。

って思ったらしいけど、あの場所に行くと、毎年、ただビールを飲んでしゃべっていただけの今年ですら、そう思うのです。


おれがあの場所で年に一度の再会を果たし続け、それから毎年のように来年は何をしようと考え続けたように、おれが知らない誰かにとってもそんな場所だったらどんなに素敵なことか。

あの場所がいつまでもちょっと前の仲間が集まってくる場所でありますように。あの場所がいつまでも新しいわくわくが始まる場所でありますように。